私がジオデシックを始めたのは1983年(昭和57年)だが、その2年くらい前に創立メンバーの1人が請け負っていた仕事を、彼が外国へ旅をしている間引き受けていたことがあった。それが現在の徳山ダム周辺(岐阜県揖斐郡揖斐川町東杉原)の人工地震解析データのMap製作の仕事だった。
旧徳山村周辺がダムの指定を受けたのは1978年(昭和52年3月23日)、水源地域指定を受けたのは1985年(昭和59年2月10日)、整備計画が決定したのはその年の3月末だった。
こうしてタイムラインを振り返ると、私が手伝ったMap製作の仕事はダムの指定を受けてから整備計画を決定するまでに必要な調査だったようだ。不覚なことに、私はこの仕事のことも、徳山のこともそれから思い出すことはなかった。
それからどれくらい経過しただろうか。
徳山村の写真を撮り続けて、今年の3月に永眠された旧村民の増山たづ子さんの存在がマスコミに紹介されるようになったとき、忘れていた徳山ダムの仕事を思い出したのだ。彼女の写真集やドキュメンタリー番組を通じて、そのエリアで長年生活してきた人々の存在と苦悩を知った。
わずかな期間ではあったが、徳山ダム建設の仕事に関わったことを悔やんでいる自分がいた。白地図の上に人の存在が記されることはなかった。
現在、確認できるGoogle MapやGoogle Earthのサテライトデータでも、同じように人の存在が記されることはないが、そこにどれだけの人間や動物、植物が存在し、どんな問題を抱えているのかリンクさせることはできるのだ。
その徳山ダムに、いよいよ来月の25日から貯水が開始されるという発表があった。
総貯水容量6億6千万立法メートル。その大きさは浜名湖の約2倍に相当する。
30年かかった容量日本一のダムが完成することになる。
北緯 35度39分55秒
東経136度30分08秒
現在のサテライトデータにはまだ写っていないが、やがて同じ場所に大きな湖面を確認できる日がやってくる。
水没総面積:1,520ha
水没戸数:511戸
水没農地面積:134ha
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