「川合健二マニュアルが届いたよ」と、秋山さんから電話をもらった。その電話中に、窓の外には郵便配達の姿が。
構想から2年をかけた川合健二の本が完成したのだ。
巻末に協力者の1人として名前を掲載していただいたが、私が提供できたのは163ページの写真1枚だけである。
まだ、すべてのコンテンツに目を通してはいないのだが、私にとって拝読する初めての内容だったのが、宮本常一と川合健二の対談「自然を語る」(1970年7月「建築」からの出典/130〜145ページ)だった。川合が宮本常一と会っていたとは驚きである。対談の内容は大変興味深いものなので、このチャンスにぜひ本を予約して読んでほしい。
川合健二マニュアル
acetate 008
著者: 川合健二ほか
判型: 239×148mm 頁数: 288頁
編集出版: アセテート
定価: 3,360-円(税込)/予約特別価格2,800円
二人の対談ページを読むのに、私はBGMとしてあるクラシックを選らんだ。
それがどんな曲なのかは、川合と初めて会った1973年に話が戻る。
川合健二マニュアルには、残念ながら車や音楽の話はほとんど登場しない。
私が知った車についての話は、すでに以前のエントリー「川合健二 土に還る車」で紹介した。
ここでは、音楽について川合と交わしたお話しを紹介しよう。
栗田「ここの音響はどうですか?」
川合「ここにステレオがある、あまり上等じゃないが、いっぺんかけてみるかな」
「これは電子音楽だな」
そういって鳴り始めたのが、ウォルター・カルロス (Walter Carlos) の演奏による
「Sinfonia to Cantata No. 29」だった。
1969年に発表されたアルバム「Switched-on Bach」の最初の曲で、モーグ・シンセサイザーの音が鉄でできたコルゲートパイプの室内に響き渡った。
聴いたあとに川合が言った言葉が印象的だった。
川合「時代を先行している感じがする、文明の行くべき姿を一番先頭に立って指し示している感じがするな。人間の苦しみや悲しみも含めて、何か、未来を示すような感じがする」
テープの前後には、かすかだが奥様の花子さんの感想も残っていたのだが、録音のマイクから遠く、内容を聞き取ることができなかった。残念!!
川合はこのとき、まだ男性だったウォルター・カルロスと友人だと語った。その後、なのか前後関係がよくわからないが、ウォルター・カルロスは性転換して女性になり?、ウェンディ・カルロス (Wendy Carlos)として現在でも活躍している。
スタンリー・キューブリックの映画「時計じかけのオレンジ」の音楽を担当したことは後で知ったが、ディズニーの映画「TRON」も彼女の担当だったとは知らなかった。
「川合健二マニュアル」は建築や農業、環境問題のコンテンツがメインだが、それは社会が川合健二に興味を抱き、紹介することができた一部でしかない。もっと文化的なことや日常生活についても、開けると楽しい多くの引き出しを持っていたのが川合健二なのだ。彼を通じて、彼が興味を持ち調べ上げた「ホールアースカタログ」のような世界を知ってみたかった。はじめての方はぜひ「川合健二マニュアル」から読んでみることを薦める。そこに彼を知ることができる、さらに多くの糸口がみつかるはずだからだ。
私のところにもこの本が届きました。
今まで、石山修武を通した川合しか知らない私には刺激的な本で、モノづくり、ものと人、など様々な大切なことをこの本は教えてくれそうです。
投稿情報: fuRu | 2007-11-27 13:13
fuRuさん、どうもです。
この本の出版を契機に、自分が収集した資料や録音テープなどを整理しはじめています。
あらためて聞く川合さんの収録話しに、20代では理解できなかったことがシンプルにうなずけるようになりました。
機会をみて、またこのブログで紹介しようと考えています。
投稿情報: 栗田 | 2007-11-27 14:00
私も購入しました!
一連のエントリーで川合健二氏を知るまで、コルゲートハウスは石山修武氏の開拓者の家がオリジナルだと勘違いしていました。
これから楽しんで読めそうです。
投稿情報: 2mo | 2007-11-27 19:16
わぉ!
2moさんがこの本を手に入れたとは。
まさに予期せぬというか、期待していた以上の広がりになったわけですね。
エネルギーの伝承、共有知の拡大こそ、川合さんが望んでいたことですから。
楽しんでお読み下さい。
投稿情報: 栗田 | 2007-11-27 19:59
akiさんのブログで川合健二のコルゲート住宅を知り、こちらにたどり着きました。
「車を土に還す」など常人では考え付けない巨視的なところに惹かれ『川合健二マニュアル』を購入し、楽しんでおります。「凄い」という言葉しか浮かびません。
川合健二の更なる情報を楽しみにしております。
投稿情報: kass | 2007-12-18 11:58
kassさん、はじめまして。
[email protected]をブリコルールする方のようですが、お若い世代として、存分に川合健二を吸収してください。リアルタイムで川合氏と接することができた世代ですが、複雑なおもいは特にありません。仲間と「お茶の水博士」と呼んで、彼の存在を喜んでいました。
今は、彼の思想から何を受け継ぐのか、自分との問答のように考えています。
「鉄は酸化し、土に還る。そしてまた鉄になる循環を信じて」
投稿情報: 栗田 | 2007-12-18 19:50
栗田さん。お久しぶり・・。
私の知らない川合健二「本人の言葉」が読めて、幸せいっぱいの本でした。
ミカン畑を一緒に耕した昔を思い出しながら、何度も読み返しています。
若い世代の色々なコメントが寄せられるといいですね。
投稿情報: yanbou | 2008-01-31 21:30
yanbou さん、こんにちは。
川合さんがおつくりになったミカン、一度だけいただいたことがありました。
不揃いだけど、甘くて、あの場所の記憶が封じ込められたような味!
この本を見ながら、南向きのあの傾斜地をなつかしく思い出します。
投稿情報: 栗田 | 2008-02-01 10:33