著者:姜尚中
出版社:集英社新書 444C
ISBN-10: 4087204448
価格:714 円(税込)
政治学者である姜尚中氏と爆笑問題の二人との対談(NHK-TV番組 「爆笑問題の日本の教養」9月30日放送)を見て、俄然、興味を持った。
本屋で手にしたのが、この新書「悩む力」。
○○の力という本はいろいろあるが、力をタイトルの入れているので当然、肯定的な内容である。
私がこの本を読んでみたくなったのは、目次から第三章77ページに書かれている「ブリコラージュの可能性」をみつけたからだ。
ブリコラージュについては、私も2004年に企画制作した「Be-h@usの本」で簡単な解説をした。
その後、この言葉は使われることが多くなったが、「悩む力」には私が最近「ブリコラージュの実践」から感じている気持ちが簡潔に書き記されていた。
前半、ウェーバーの「神々の闘争」、ニーチェの「背面世界」に続き、レビィ・ストロースの「ブリコラージュ(器用仕事)」的な知の可能性について解説。
以下、本文より抜粋。
私たちの社会は、いますべての境界が抜け落ちたような状態になっていて、そこに厖大な情報が漂っています。たしかに、人間の脳というのは際限がなく、放置しておくと限りなく広がって、得手勝手にボーダーレスな世界を作り出していきます。
しかし、現実の肉体や感覚には限界があります。だから、反対に、自分の世界を広げるのではなく、適度な形で限定していく。その場合でも、世界を閉じるので
はなく、開きつつ、自分の身の丈に合わせてサイズを限定していく。そして、その世界にあるものについては、ほぼ知悉できているというような「知」のあり方。
それは「反科学」ではありませんが、ある意味では「非科学」でもあります。が、そういうあり方があってもよいのではないでしょうか。
人は何を知るべきなのか、そういう問題は、どんな社会が望ましいかということともつながっています。いずれにしても、われわれの知性は何のためにあって、われわれはどんな社会を目指しているのかということを、考え直す必要があるのではないでしょうか。
姜尚中氏は私と同じ1950年生まれ。
同じような世代感がある。
最後の方で書いている、「老人力=攪乱する力」とか、「横着者でいこう」などは、生まじめで小心者の私が、この先、悩んで考えぬいて、突きぬけていく、同じゴールなのだと苦笑いした。
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