今年は、鳥型グライダーを自作してみようと計画。
その資料集めで、先達のみなさんが歩んでこられたさまざまな開発モデルを探し出し、調べ中。
鳥型と言っても、様々な鳥がいるわけで、どんな鳥の飛翔スタイルを模倣するか、それによって開発するモデルのスペックが決まるのですが・・・。最初からハードルが高いのはわかっていても、なるべく鳥に近いデザインで安定飛行できるように、垂直尾翼など付けなくてもピッチ、それにヨー安定が確保できる全翼機スタイルを目標に考えています。
鳥型グライダーの経緯を調べているうちに、知ることができたのが「かもめのジョナサン(Jonathan Livingston Seagull )」映画版でのお話。
この映画は、飛行家でもあったリチャード·バック(Richard Bach)が1970年に発表した小説をもとに、1973年に映画化されたもの。
原作はリアルタイムで読んでいたのですが、残念ながら映画は見ていませんでした。
人間はほとんど登場せず、訓練されたカモメたちの演技?を主に、野生のカモメとカリフォルニアの自然を背景に撮影された物語。そこに実はRCカモメが活躍していたことを知りました。
寓話に近いストーリーのため、実際のカモメだけでは表現しきれないシーンが必要となり、このRCカモメを使用したようです。
RCカモメの開発者は、昨年他界したMark Smith氏で、彼はAMA(Academy of Model Aeronautics)の副代表まで勤めた人物。70年代には「WindFree」というブランドで評判のグライダー・キットを開発/発売していました。
まだコンピュータ制御のプロポがない時代、どのようにコントロールしていたんでしょうね。
映画の方は、音楽にシンガー・ソングライターのニール·ダイアモンドを起用、ゴールデングローブ賞とグラミー賞を受賞します。その楽曲をBGMにしたダイジェスト版がYouTubeにUPされていました。
※追記:1時間39分のフルバージョンを7本に分割したムービーがYouTubeにUPしてありました。
これから私もみます!!
・JonathanLSeagull1973 さんのチャンネル
Mark Smith氏が製作したカモメ型グライダーには、不自然な縦安定板は取り付けていないように見えます。 → aquilaさんUPの「ラジコン技術」の記事から、翼端板が付いていたことがわかりました。
以下はその記事のまとめ。
■Mark Smith氏製作のカモメ
・最初10名以上のRCモデラーに開発を依頼
・製作条件:本物のかもめのように見えること
リアルな飛行ができること
・最初、3機試作するが方向安定性の不足に悩まされる
・解決策:1930年代の無尾翼機を参考に、翼端付近に小さな透明の安定板を4号機から取り付けた
・他のバージョンではVテールタイプもあった
・飛行できたが、その飛びは飛行機のようでカモの飛びとは異なっていた
・このプロジェクトに興味を持った送受信機のメーカーであるオービック社は、コントロール装置の改造を引き受けるが詳細は不明。
・操縦練習で機体を破損し、最終的に20機製作することになる
・本番では目を見張るような操縦を披露してカメラマンを感嘆させた
・2羽のカモメを同時飛行させているシーンは父親と二人で操縦した
・背面飛行も可能だった
・20機製作(白かもめ4機、黒カモメ5機)
・黒カモメは黒く見えず、幽霊のように見える
・スチロフォーム
・スパン:152cm
・撮影地:ハワイのマウイ島モコレア岬
・操縦者:マーク・スミスと彼の父親
・1973年6月11日~18日
・19日事件が起きる:2機同時飛行中、1機のパワーダウンで2機不時着するが、発見されたのは1機のみ。後から飛んでくるのを発見、つかまえる。
BBCのドキュメンタリーなどとは違い、ストーリーに沿ったカモメの飛翔は、時代を超えて見応えがありますね。
原作の小説は、ヒッピーカルチャー全盛の時代背景に後押しされ、アメリカで1500万部。日本では120万部のベストセラー(五木寛之の翻訳)となりました。参照したウィキペディアにも書かれていましたが、巻末ある五木氏の感想は、あまり好印象ではないようです。時代背景や宗教理念などを交えた見方もあると思いますが、40年経って読み返してみると、純粋に「飛び方を極める心情」を昇華しているように感じました。こう思えるようになったのは、この10年間、私も飛行機をコントロールできるようになったことが大きく影響しているように感じます。特に佐渡でグライダーを飛ばすようになって、飛行体をコントロールすること、自然の力を読み取ることなど、多くのことを学び、考えるようになりました。
原作者リチャード·バックの作品を時系列で見ていくと、「かもめのジョナサン」がどのような位置づけで書かれたものなのか、客観的に理解することができます。自分のメモ書きとして以下に記載。
・STRANGER TO THE GROUND(邦題:王様の空)1963年
処女作、彼がNATO空軍に所属していた時代、ジェット戦闘機のパイロットであったときの飛行記録
・BIPLANE(邦題:ぼくの複葉機) 1966年
「かもめのジョナサン」の原型のような内容で、複葉機で飛び始めた彼の実験飛行を散文詩のように描いている
・NOTHING BY CHANCE(邦題:飛べ、銀色の空へ)1969年
おんぼろの複葉機デトロイトペークスP-2Aを手に入れ、ジプシー飛行士をしていた時代の物語
・Jonathan Libingston Seagull(邦題:かもめのジョナサン)1970年
スピードの限界に挑戦したカモメの物語だが、彼の飛ぶことへの体験と理想を寓話として綴った内容
・A Gift of Wings(邦題:翼の贈物)1974年
航空雑誌「フライング」や古典機雑誌「アンティカー」の編集に携わっていた時代も含め、彼が執筆したエッセイ45篇をまとめたもの
・There's No Such Place As Far Away(邦題:飛べ、光のなかを 飛べ、永遠のときを)1976年
児童文学書
・ILLUSIONS(邦題:イリュージョン)1977年
ジプシー飛行士をしていた経験をベースにした青春ファンタジー小説
・The Bridge Across Forever(邦題:翼にのったソウルメイト)1984年
自伝的ラブストーリーという恋愛小説にとどまらず、精神世界や思想的なものまで描いている
・One(邦題:ワン)1988年
別れた妻レスリーを登場させた冒険ファンタジー
※以降の出版本省略
現段階で絞り込むことができた鳥型グライダーの開発テーマ(カモメ型)は以下のようになっています。
・カモメのスケール感を重視したデザイン:ガル翼の採用
1991年、米国でSteve Hinderksが開発/キット化したBirdworks社製のRC Gull、その後、2008年にフォーム翼(対称翼)からグラス翼(対称翼継承)にグレードアップしてARF機で小ロッド発売される。どちらのキットも透明板の翼端チップレットや垂直尾翼を備えていた。後発のグラス翼機はガル翼の角度を実際のカモメのように強調したデザインに変更されている。
1991年バージョン
2008年バージョン
■Birdworks RC Gull available again
■Sea gull by Zero Gravity, BETA TEST
注目:対称翼を採用している利点は、風圧中心の移動がなく、25%くらいで固定されること。
・縦安定の解決策:後退翼 / 翼型(S字orアンダーキャンバー) /空力中心と重心(重心を空力中心よりも前にする)
1990年、Dan Troxel が カリフォルニアのKite Hill Mission Viejoで飛行させたRC Seagullは、カモメよりもアホウドリに近いアスペクト比の翼、角度の大きな後退翼で上反角がほとんどないのが特徴。尾翼も固定されているように見える。
■Dan Troxel Flying RC Seagull Kite Hill Mission Viejo Ca 1990
注目:後退翼、ねじり下げによる縦安定、上反角をつけない高翼の横安定性を活かしている
さて、どのようなデザインで飛び始めるのか、楽しみです。
いずれも素晴らしい鳥たちですね。
私が全翼機に凝っていた時に発見したことなんですが、
後退角を付け翼型を少し厚めにして翼の抵抗を大きめにすると、
垂直尾翼を無くしても安定飛行することが出来ます。
(特に翼端に抵抗を与えるといいです)
http://rcp.web.infoseek.co.jp/rc2_mist_fww.html
ネジリ下げも効果的です。
ドラックラダーを付けるともっと良いです。
薄翼だと高性能ですが、安定して飛ばすのが難しくなります。
カモメ型のグライダーは私もずっと考えていたものです。
是非作ってみてくださいね。
投稿情報: 実験工房Sekiai | 2012/02/13 09:01
こんにちは。
以前より貴ブログは拝見させて頂いています。
ジョナサンの記事は当時のラジコン技術でも同じ写真を見た覚えがあります。
ロケを行った場所は地元の聖域(?)で数機のRCジョナサンのうち一機が飛行中に行方不明になって、探しても見つからず諦めて帰った翌日にその一機が飛行しているのを発見した!という信じ難いエピソードが載っていました。ほんとかね(笑)
投稿情報: aquila | 2012/02/13 10:42
ホルテンと同じような後退角、それに厚翼も効果があるんですね!!
確かに海外でも厚翼で鳥型グライダーを製作されている方がいました。
ヨシオカのMistralが今でも手に入るのであれば、同じ経験をしてみたいです。
効果のある手法をバランスよく取り入れるには、製作、改造が容易な発泡翼フィルム貼りから始めるのが手軽かと考えています。また、アドバイスよろしく。
投稿情報: 栗田 | 2012/02/13 12:51
楽しいエピソードを思い出していただき、ありがとうございます。
やはり当時、ラジコン関連では話題になっていたんですね。
追記しましたが、フルバージョンのムービーがみつかったので、どんなシーンにカモメグライダーが使われているのか、見つけてみたいと思います。
投稿情報: 栗田 | 2012/02/13 12:52
これは自作全翼機Nazcaとの比較なのですが、
http://rcp.web.infoseek.co.jp/rc2_nazca.html
薄翼のNazcaは、翼端板無しで飛行するのは大変難しく
すぐにフラットスピンを起こしますが、
ミストラルウイングの全翼機は
垂直尾翼が無くてもなんの不安もなく安定飛行します。
ですから、この位の翼型が丁度良いようです。
もし、手元に翼端上反角の無い
エルロングライダーの翼があるのでしたら、
V字に組み合わせて飛ばしてみるといいと思います。
両エルロンを跳ね上げれば、
重心合わせだけで簡単に飛ぶはずです。
投稿情報: 実験工房Sekiai | 2012/02/13 16:05
当時の記事を発見しましたので宜しければご覧下さい。
http://twitpic.com/8jcnoh
http://twitpic.com/8jcnw8
ちょっと記憶と違ったようです。
投稿情報: aquila | 2012/02/13 22:34
Sekiaiさん、条件に見合う翼がありました。
ジョイントを参考に、なんとか自作してみることにします。どんなになるか楽しみ!!
投稿情報: 栗田 | 2012/02/13 23:29
aquilaさん、記事をUPしていただき、ありがとうございました。たいへん参考になりました。走り書きですが、箇条書きにまとめてみました。
マーク・スミス氏製作のカモメ
・最初10名以上のRCモデラーに開発を依頼
・製作条件:本物のかもめのように見えること
リアルな飛行ができること
・最初、3機試作するが方向安定性の不足に悩まされる
・解決策:1930年代の無尾翼機を参考に、翼端付近に小さな透明の安定板を4号機から取り付けた
・他のバージョンではVテールタイプもあった
・飛行できたが、その飛びは飛行機のようでカモの飛びとは異なっていた
・このプロジェクトに興味を持った送受信機のメーカーであるオービック社は、コントロール装置の改造を引き受けるが詳細は不明。
・操縦練習で機体を破損し、最終的に20機製作することになる
・本番では目を見張るような操縦を披露してカメラマンを感嘆させた
・2羽のカモメを同時飛行させているシーンは父親と二人で操縦した
・背面飛行も可能だった
・20機製作(白かもめ4機、黒カモメ5機)
・黒カモメは黒く見えず、幽霊のように見える
・スチロフォーム
・スパン:152cm
・撮影地:ハワイのマウイ島モコレア岬
・操縦者:マーク・スミスと彼の父親
・1973年6月11日〜18日
・19日事件が起きる:2機同時飛行中、1機のパワーダウンで2機不時着するが、発見されたのは1機のみ。後から飛んでくるのを発見、つかまえる。
投稿情報: 栗田 | 2012/02/13 23:32