以前、国内で開催されたロボコンフェスに招待されていた英国研究チーム開発の人型ロボットをTV番組で紹介していたことがありました。短時間だったので、アナウンサーが簡単な説明で「国内のロボットに比べて、紐とゴムとモータを組み合わせたアナログチックなロボットですね!」と言っていたように記憶しています。
今回、あらためてこのECCEROBOTのムービーを見て、あの時のロボット(一つ前のCRONOSプロジェクト)がこれだったのかと、その開発ポリシーのすばらしさに、文化/思想の違いを感じたのです。
ECCEROBOT:
Embodied Cognition in a Compliantly Engineered Robot
従順、巧みに計画実行されたロボットによる身体認識
アクチュエータに使われている主な材料はこれだけ。
・Polymorph(Polycaprolactone ポリカプロラクトン)
ECCEROBOTの骨格および関節は、模型工作でもよく使われるようになったホット・モルダブル・プラスチックのPolymorph(ペレットタイプ)。世界には異なる製品名でいろいろな製品が存在するが、国内では「自由樹脂」が同等の素材。暖める(60〜80度)と柔らかくなり、簡単に成形できる。このロボットの場合も、中にカイトラインを入れこんで各部位を作っている。
・Dyneema Kiteline(ダイニーマ・カイトライン)
超高分子量ポリエチレンでできダイニーマ原糸は、釣り糸やカイトラインに使われており、インドア機でもよりをかけ編み込んだPEラインはよく使っている。このロボットの場合、必要な強度や扱いやすさからカイトラインを選び、腱として使っている。
・Shock Cord(ショックコード)
ショックコードもグライダーの発航時に使用するが、このロボットには海用のグレードが使われている。モータと共に筋肉の一部の働きをしている。
・Screwdriver Motors(ギアダウンユニット付ブラシモータ)
なぜブラシモータを使っているのか、その理由はわからないが、ギア比も含め、人体の動きに合うスピードとパワーを確保している。
この素材の組み合わせにより、ベースとなる身体機能をつくり、センサーと認知システムにより感覚系と物理ベースのシミュレーションを可能にしています。開発のワークパッケージは8段階まで計画されています。
RC飛行体もフライングロボットへのドアが開かれ、さまざまなタイプの飛行体モデルが開発されるようになりました。一部の超小型機を除き、ほとんどの飛行体にはアクチュエータとしてサーボモータが使われています。リンケージを介してなのか、ダイレクトか、その方法もいろいろあります。
羽ばたき機のように鳥の飛行体認識を目的にするジャンルであれば、現行のシステムとは違う、このロボットのようなアプローチが必要ではないかと感じました。
偶然なのか、ECCEROBOTの一つ目のデザイン、ロンドンオリンピックのマスコットWenlock & Mandevilleと同じです。このプロジェクトには、イギリス、ドイツ、スイス、フランス、セルビアの大学、研究機関、企業などが参加していますが、一つ目デザインのイニシャティブを握っているのは、やはりイギリスなのでしょうか。
日本にもマッスルワイヤーと称される(と思いましたが)有機形状記憶体がかなり以前に開発されていますが、高価な為か耐久性上の問題か、応用品がなかなか出て来ていませんね。これなんかは制御面での工夫次第で面白い構造体が作れると思うのですがね。
投稿情報: kaji | 2012/04/06 16:33
良くも悪くも、西洋の人間中心主義的な視点で、科学的に人間の生態的な振る舞いをどのように制御するのか、試しているように思います。材料ありきではなく、すでに存在するプリミティブな素材を使い、認知するシステムの構築に絞った開発というのがユニークですね。
伸び縮みを電気的に制御するマッスルワイヤーは、新しい素材ではあるけれども、それと似たしくみを持つ動物はいないし、ロボット工学のスタンスがECCEROBOTとはまるで違うフィールドにあるように感じます。からくり人形に使われていた鋼、真ちゅう、鯨のヒゲ、竹などの弾性ばねが、小型モータやショックコード、カイトラインに替わっただけで、主題は動きを認知するということ、それがいかにもヨーロッパ的です。
投稿情報: 栗田 | 2012/04/06 20:14