1920年生まれで、当時、日本RC模型グライダー協会の理事を勤められていた一條氏は、戦前の実機グライダーが全盛のときに、伊藤式A-2型、伊藤式B-2型、伊藤式B-6型、霧ヶ峯鳩型などの操縦を経験。戦後は、模型グライダーの試作/製作を行い、この本の出版時までには、その数が150機を超えています。
これら多くの試作機の中から、後に評判となるガルモデルのキットが誕生します。いつからこのキットメーカーが活動し始めたのか、知ることはできません。しかし、一條氏がデザインしたユニークなRCモデルキットのファンは現在でも多く、その功績を偲んで「ガルモデル飛行会」が開催されたり、オークションに出品されるガルモデルのボックスキットは高値を呼んでいます。
「ラジコン・グライダーのすべて」を読んだ個人的な感想は、みなさんが評価されている通り、一読に値する内容でした。実機グライダーの解説にはじまり、実機と模型グライダーの違いを教えてくれます。RCグライダーの基本と自作機を設計するのに必要な技術解説を盛り込んだ圧巻のコンテンツには、一條氏の模型グライダー開発から得たノウハウが活かされていると感じました。
最新の高性能グライダーを自作することは難しくても、オールドタイマーと呼ばれるようになったRCグライダーの基本を理解するには、陳腐化することのない、いつの時代にも通じるノウハウが詰まった、すばらしい本です。
まだ読んでいない方の参考になるよう、目次の詳細を記しておきます。
タイトル:ラジコン・グライダーのすべて
著者:一條卓也
出版社:電波実験社
発行年月日:1975年6月10日
目次
(1)グライダーとは
1.1 グライダーの飛ぶ理由
1.2 実機グライダーの発達
1.3 実機と模型の違い
1.4 模型グライダーの発達
(2)ラジオ・コントロール・グライダー
2.1 ラジコン・グライダー
2.2 ラジコン・グライダーの主な名称
2.3 ラジコン・グライダーのメカニズム
2.4 ラダー、エレベーター
2.5 フル・エルロン
2.6 翼端エルロン
2.7 その他の装置
(3)ラジコン・グライダーの設計
3.1 設計前の一般的な考えかた
3.2 大きさを決める
3.3 全体のスタイル
3.4 コントロール方式
3.5 スロープ用か平地用か
3.6 グライダーの種類
3.7 胴体の形
3.8 ラジコン・メカニズムの搭載を考える
3.9 胴体の断面形
3.10 胴体と主翼の取付け方法
3.11 胴体と尾翼の組合わせ
3.12 モーメント・アーム
3.13 胴体の側面効果
3.14 胴体主要部の補強
3.15 尾翼の形と面積
3.16 揚力尾翼
3.17 水平尾翼の取付け高さ
3.18 垂直尾翼のヒレ(フィン)
3.19 舵面の大きさ
3.20 主翼の平面形
3.21 アスペクト・レシォ
3.22 誘導抵抗
3.23 上反角
3.24 風圧中心の変化
3.25 取付角、ねじり下げ角
3.26 スポイラーとフラップ
3.27 設計図のかき方
3.28 翼型と翼上面の仕上げ
3.29 V尾翼機にはエルロン方式を
(4)構造と工作法
4.1 胴体
4.2 尾翼
4.3 主翼
4.4 曳航フック、ソリ
4.5 カンザシ・パイプの補強
(5)ラジコン装置の搭載
5.1 一般的な搭載方法
5.2 V尾翼機の操舵装置
5.3 ワイヤー・ロッドのあそび
5.4 モーター・サーボ・ボックス
5.5 V尾翼の新メカニズム
(6)重心の位置と舵角
6.1 重心の位置
6.2 舵角について
6.3 重心を必ず合わせること
(7)フライト・テスト
7.1 手投げ
7.2 グランド・イフェクト(地面効果)
(8)模型グライダーを上昇させる
8.1 曳航によってあげる
8.2 楽に曳航する方法
8.3 ショック・コードを利用する方法
8.4 ウインチを用いる方法
8.5 模型用エンジンを装備してあげる(モーター・グライダー)
8.6 スロープ・ソアリング
(9)上昇風の種類
9.1 熱上昇風
9.2 斜面上昇風
9.3 その他の上昇風
9.4 美しいソアリング・コースを得るには
9.5 滑空比の伸び
(10)エンジンの取付けとパイロン
10.1 エンジンの取付位置
10.2 アップ・スラスト
10.3 モーター・パイロン
10.4 落下式モーター・パイロン
(11)スポイラー、フラップおよびドラッグ・シュート
11.1 スポイラー
11.2 フラップ
11.3 ドラッグ・シュート
(12)特殊型グライダー
12.1 無尾翼機
12.2 先尾翼機
(13)モーター・グライダー
13.1 最近のモーター・グライダー
13.2 競技会では
(14)ミニ・ソアラー「ヒュッター17型」の製作例
14.1 胴体
14.2 翼台と尾翼
14.3 ソリと車輪
14.4 主翼
14.5 翼支柱
14.6 絹張りと塗装
14.7 重心を合わせる
14.8 ミニ・ソアラー「ヒュッター17型」の設計図
付録
付録1 付録図面の解説
付録2 代表的な実機グライダー三面図
付録3 グライダーい使用される主な翼型
※この本の中古書を探すにはオークションがベスト。Amazonの中古書価格は高価です。
■関連サイト
・第3回のんびり飛ばそう会&ガルモデル飛行会
・のんびり飛ばそう会&ガルモデル飛行会
・天翔りたるものども
・RS-1・ZANONIA
・AS-K14
・GIPSY
・ガルモデル/シュトルヒ
・Storch Ⅳ シュトルヒⅣ
・九帝五型・阿蘇号
・萱場式A3-1号
楽しい発見をいつもありがとう。楽しく拝見しています。
自分の「この本」もカバーはボロボロです。今では開く事も少なくなったけど、素晴らしい本には違いありません。しかし今この時に合うグライダーの本が出てきてほしい。
投稿情報: 流星 | 2012/07/04 10:01
37年も前に出版されたグライダーの本。今、手に取ってみても、現在の状況で役に立つことは少ないのではないかと、入手には消極的でした。しかし、実際に読んでみると、これまで読んだどの本よりも基本的なことをわかりやすく解説してあり、しかも実践的でした。
機体を自作するフライヤーが少なくなった現在、製作や設計に関する記述に興味を示さない方もいるかもしれません。しかし、自分で修理や改造をすることが好きな方にはありがたい内容だと思います。
いくらよく書けている本でも、あまりにも古すぎて、ハードウェアや送受信機の設定などについては、新たな改訂が必要です。優秀なパイロットは昔よりは多くなったでしょうし、書き手は増えているのですからぜひ新しい企画で本を出してほしいものです。
RCグライダー人口が少ないから、ビジネスとして書籍の制作/出版が成立しないという声はよく聞きます。でも、それでは堂々巡りです。出版社も根性ないけど、メーカーや協会にも責任があるように思います。
投稿情報: 栗田 | 2012/07/04 15:35