タイトル:流体機械工学
著者:小池 勝
出版社:コロナ社 2009年初版
ページ数:160ページ
定価:2,300円+税
「やまめ工房」石井さんのブログで紹介されていた「流体機械工学」の本を読みました。
この本は、機械系教科書シリーズの1タイトルとして、大学や高専の学生を対象に流体機械に対する理論的アプローチを学習する目的で書かれています。内容を理解するには、流体力学の基本的な知識を理解していることが前提なので、方程式や計算式がどんどん出てくるし、読み物として面白い一般書ではありません。
目次
1. 揚力の理論
2. 3次元翼の理論
3. 翼の空力特性の実験データ
4. プロペラ
5. 風車
6. 送風機、ポンプ
7. 流体機械の騒音
個人的に興味があったのは「3. 翼の空力特性の実験データ」の章で解説されていた、低レイノルズ数領域(10の5乗以下:10万以下)における各翼型の実験結果でした。
・3000000以上の場合 (ジェット機など)
・100000〜3000000の場合 (レシプロ機)
・20000~200000の場合 (模型飛行機)
・20000以下の場合 (紙飛行機や昆虫)
どのような翼型が効果的な空力特性をもつのか、現在、佐渡でメンバー有志と行っている「カモメ型グライダー」の開発に役立つことがあるかもしれないと考えたからです。53ページに掲載されている「レイノルズ数依存性のまとめ」には、10の4乗付近で起きる意外な揚力係数の低下が報告されていました。それも、しっかりと翼厚のある翼型ほど抵抗係数が増加する傾向があり、簡単なキャンバーをつけた板翼の方が落ち込みのないフラットな性能を維持しているのです。偶然、私が製作した垂直尾翼のない1号機のカモメは、6mmのEPP板翼にガル角をつけただけで、風速6m/sの日に初滑空成功。メンバーを驚かしました。
本書の著者である小池さんと石井さんが共同で発表されている論文があります。「ハンドランチグライダーの空力性能(日本航空宇宙学会論文集 57(663) 166 2009年)」というタイトルで、前出の本文「レイノルズ数依存性のまとめ」の内容をベースに、具体的な翼型の説明も含め、HLGの空力性能実験の結果を公開しています。この論文は「日本航空宇宙学会ホームページ」からダウンロードできます。
小池さんのその他の論文や講演集は以下の通りです。
・低レイノルズ数における翼の乱流装置の効果
若松智哉,小池 勝
日本航空宇宙学会,第41回流体力学講演会/航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム2009 講演集 2009年
・低レイノルズ数において翼表面の柔らかさが空力性能に及ぼす影響
佐藤清太郎,岡慶典,小池 勝
日本機械学会関西学生会 学生員卒業研究発表講演会 2009年
・ハンドランチグライダーの空力性能
小池 勝,石井満
平成20年度航空宇宙空力班シンポジウム「航空宇宙工学における空気力学の挑戦」 2009年
・低レイノルズ数での翼まわりの流れの可視化
小池 勝,丸山智裕,山本尚樹
平成19年度科研費空力班シンポジウム「航空宇宙における空力研究」論文集 2008年
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