はぐれ鷹
著者:熊谷達也
単行本:359ページ
出版社:文藝春秋 (2007/10)
ISBN-10: 4163264108
ISBN-13: 978-4163264103
価格: ¥ 1,700
小説本などあまり読まない私が、ひさしぶりに手にした本のタイトルは「はぐれ鷹」。表紙のデザインやタイトルだけみると「股旅もの」の時代小説みたいですが、内容はもっとアウトドア派の「ネイチャー」系で、鷹匠と鷹の物語なのです。出版社が文藝春秋ということで、この装丁はしかたがないのでしょうが、もっとうまくプロデュースすれば注目されてよい内容なだけに残念。
この本を知ったのは、モデルとなった鷹匠 松原英俊氏のHP「鷹匠:FALCONER」で、鷹匠と角鷹(くまたか)の関係を詳しく知りたくなったのです。幸い図書館の蔵書から借りて読むことができました。
鷹匠になることを夢見て“最後の鷹匠”に弟子入りする主人公。やがて高齢の師匠に不満と不安を覚え、1年あまりで独立。雪深い月山山麓の山小屋でひとり、手探りで訓練を重ねていきます。そのアウトローぶりはモデルの松原氏にダブるわけですが、リアルな松原氏の経歴に勝ることはないでしょう。
小説を読まない私が批判するのもおかしいのですが、山本周五郎賞と直木賞をダブル受賞した小説家 熊谷達也の作品としては、荒いストーリー展開だと思いました。もっと野生の鷹と人間の対峙が詳細に描かれているのではと期待していましたが、泥臭い人間模様の説明が多いのです。それもまた現代に生きる鷹匠を表現するには必要なのかもしれませんが・・・、やはり小説は好きになれないな。ドキュメンタリーがいい。
鷹の種類や狩り場の違い、流派、家元制度など、鷹匠にもいろいろあるようです。
大名や天皇と共に鷹狩りをした鷹匠とは違い、角鷹を扱う鷹匠は、里山から離れた高地で孤独な命がけの狩をしてきました。ある意味、鷹匠の中でもアウトローなのかもしれないのです。それを確認する意味でも「鷹匠の技とこころ」や「天皇の鷹匠」などの本まで手を伸ばしてみようかと思います。